《”ねぎたけ”こと・・・禰宜 猛(ねぎ たけし)です」♪》
「未来はチョッとしたことで変えられる」 -69-
つい先日、
池袋からいつものように最終の特急レッドアローに乗った時。
隣に、
杖を突きながらも、
背筋の伸びた凛としたご老人が乗ってこられた。
大きな紙袋をもって、
それを網棚に上げようとしていたので、
『お手伝いしましょうか?』と声をかけたら、
『ありがとう!』と小さな笑みを浮かべられた。
私は少しお酒が入っていて、
眠気を感じていたので、
荷物を棚に乗せ、
席について、
瞼を閉じようとしたら、
『どちらまで行かれるのかな?』と話しかけてこられた。
『〇〇までです。
大きなお荷物で大変ですねぇ~』と返すと、
『明後日から入院でね。
一人暮らしなもんだから準備が大変なんだぁ~』
『”先輩”がですか?』とお顔をお覗き込むように尋ねると、
『”先輩”なんて何十年ぶりに呼ばれたかなぁ~ワッハッハッハ。
実は末期の大腸癌でね。
あと1年持つか持たないからしい・・・・ワッハッハッハ』
『えっ?・・・』
私はご老人の言葉を理解するのに数秒かかった。
確かに頬はこけたように痩せてはいるが、
言葉もしっかりされ、
堂々とした風格さえ持っておられたから。
返す言葉を選んでいた私に、
ご老人はまた話しかけてこられ、
話しを続けられた。
『婆さんも8年前に逝って子もおらん。
仕事人間で婆さんには寂しい思いをさせたけど、
わしは仕事が好きで、
好き勝手にやってきた。
一緒にやってきた人達にも恵まれてたし、
90超えるまで大病無く来れたし、悔いは全く無い!』
レッドアローは所沢に到着し、
私は次の停車駅が目的地。
でも、
このご老人の話はまだ続いた。